海外、特に多国籍文化な場所はとにかく、自分の普通が通じない。
日本で当たり前のことを海外で求めるなら、金を積むのが手っ取り早い。
すべてが金とリンクするわけじゃないけれど、貧乏旅行とファイブスター旅行はやっぱり違う。
日本ではコンビニで納豆巻きを買っても、50円のストッキングを買っても笑顔で、ちゃんと
”ありがとうございました”
と言ってもらえるが、そうはいかない国もある。
”あんた、これしきの買物でビニール袋を要求するわけ?”
という顔をされることも多々ある。
多国籍とは言えないが、インドは独特で、もちろん、日本の普通は通じない。
オーストラリアの生活で”普通”という概念をブチ壊された私としては、あんまり物事に動じなくなったが、やはり、貧乏旅行。
金で解決できず、必死に交渉する身としては嫌な想いをしたことが一回だけあった。
ジョードプルでの出来事。
ラジャスターン州、ジョードプール。
砂漠の近くの小さな街。
クラクションが鳴り響き、ほこりが舞う、独特のビジネスが広がっている場所だった。
日本語を話すインド人が多いと、その土地には日本人観光客が多いことがすぐ分かる。
ジョードプールもそんな場所のうちのひとつ。
今でもお金持ちのインド人が暮らすマハラジャ城と、Majestic Fort、青い壁の家。
人々を魅了する観光名所がこの小さな街にいくつかある。
小さな街には数多くのゲストハウス、レストラン、土産屋があり、観光客集客にみんな必死。
地球の歩き方やロンリープラネットに掲載されている店は、店の前を通り過ぎるたびに何度もそれを口にし、看板にもそれを堂々と掲げてビジネスをしている。
お店に置いてあるノートブックには各国の旅行者からのメッセージ。
食事をしたら、そこにメッセージを書かせる→次に来た観光客に見せ、同じ事を繰り返す。
ジョードプールでは同じ光景をいくつか見た。
マクロガンジーの日本食レストランにあった地球の歩き方(かなり古い)を見て今のゲストハウスに予約の電話をして決めたのだけど、ここもオーナー、ツワモノだったのである。
マクロガンジーの最寄り駅、チャキバンクから電車に乗る事20時間、9時半に駅に到着し、ゲストハウスに改めて電話すると、予約していたはずの部屋(300ルピー)がないとオーナーに言われた。
安宿で予約がフッ飛ぶのはよくあること。
が、すでに夜。バックパック背負って安宿を探すのは困難なのである。
”この時間に他の宿を探すの!?無理ですよ!”と伝えると、じゃあ、とりあえず、来いと言われたので、迎えに来てくれた車に乗り込み、ゲストハウスへ。
街はしーんと静まり返っていて、人が全くいない。
坂道を車でゆっくりのぼる。
バックパックをかついで行くのは一苦労だろうなぁ、と駅まで迎えに来てくれたことには感謝。
ゲストハウスに到着すると、3階にある部屋に通される。
“500ルピーの部屋よ。だけど、私が予約のミスをしたから、この部屋を400ルピーで貸してあげる”
オーナーはそう言うけれど、400ルピーは予算オーバーなのである。
100ルピー、日本円に換算したら、約145円。
安い!!
されども、ここはインド。
物価は全く違い、100ルピーでまったく違ってくる。
(貧乏旅行の場合)
それに、私はすでに300ルピーが限度だともともと1億回ほど伝えてあったので、話が違うのであーる。
うっし。
長旅で疲れてるため、他のゲストハウスを探す気にもなれず、ここからが交渉。
“私は最初に300ルピーが予算だって伝えて部屋を予約して、その部屋をあなたの手違いで他のゲストに渡してしまったのだから、この部屋を300ルピーにするべきだと思う”
そう言うと、オーナーは
“この部屋は高いのよ。明日はもうすでに白人女性が予約していて、600ルピーで泊まるのよ”
この部屋が600ルピー!?
それは無い!!とインド滞在1ヶ月で色々と経験した私は確信。
モッてるな!!
ということで、ガイドブック見たことをアピる作戦。
評判が悪ければ、お客さんは来ない。
ガイドブックやネットの批評サイトの評価を気にするインドのオーナーたちには結構効く作戦。
※
部屋をディスカウントしてもらうとき“ガイドブックやネットに良いコメントを書くよ”と言って部屋の値段をさげるのが白人のバッパーでは主流。ちなみに、気がよくて裕福な日本人はディスカウントをしてこないと思われていることもあるので、通常の値段より多く言われることが多い。
“私、日本のガイドブック見て、いいコメントがあったから、ここに泊まりたくて電話で予約して来たのに、予約した部屋はフル。ミスしたのはあなただから、300ルピーで泊まらせる方がベターだと思うよ”
するとオーナー。
“…オーケー。今日は特別。明日から300ルピーの部屋に移ってもらうからね”
ということで、その部屋に滞在することができるようになったわけだけど、荷物を置いてバスルームに直行すると、オーナーが言ってた“ホットシャワー”が全く出ない!
20時間の電車の旅で、ほこりまみれた私はホットシャワーを何よりも楽しみにしていた。
何度も直してくれって頼むが、まったく動く気配がないオーナーとスタッフ。
夜も遅くなっていたし、疲労困憊だったので、あきらめて眠ることに。
翌日、300ルピーの部屋に移動。
“昨日、温水が出なかった”とオーナーに伝えると“おかしいわね。今、泊まってる白人女性は問題なく使えたって言ってたわよ”
そう言われたので、私のやり方が間違っていたのかなぁ?まっ、過ぎたことだし!と新しい部屋でシャワーを浴びようとするが、9時から12時まで停電のためホットシャワー使えず。
(このゲストハウス、9時から12時まで毎日停電になる。←これも知らされない事実のひとつ)
気にしていても仕方ないので、街を探索することに。
夕方戻って来て、電気が使えるようになったのでホットシャワーを浴びるのをトライすると出ず。
オーナーにチェックしてもらうが
“おかしいわねー”の一言で終わり。
“ホットシャワーが出て300ルピーって言ったのに、これじゃ違うよ。通常、ホットシャワーが出ないのなら、300ルピーは高い”
そう言うと、明日に直っているはずだから、バケツのお湯を使ってと言われ、結局バケツ一杯のお湯をコップでくみ、身体を洗った。
無いよりマシ。
お湯があるだけ感謝。
だけど、これで300ルピーは納得できない!
直ると言っていたけど、結局、翌日も同じ状況。
こんな状態が続けば、当然、宿泊客同士で
“君の部屋、ホットシャワー出る?”
とお互いに聞くことになる。
すると、聞いたすべての人が“使えない”とアンサー。
実はこの宿、ホットシャワーがあると言ってお客さんを集めているけど、ホットシャワーが出ないのであった!!
(ラッキーが起きるとたまに浴びれるらしい)
私が最初に泊まった部屋に翌日から宿泊した白人女性とのちに仲良くなるのだけど(彼女とは次のジャイサメールでも同じゲストハウスに泊まることになる)オーナーが使えると言っていた彼女の部屋もホットシャワーは出ず、は600ルピー払って泊まってるのにシャワーが出ない!と怒っていた。彼女は通常よりも高いお金を払って滞在していた)
オーナー確信犯である。
さらに、オーナー、ダブルブッキングも得意らしく、観光客に部屋があると言って呼んでおいてはフルと言うことも多いらしく(街中で仲良くなったアメリカ人観光客たちは夜遅くに到着するので、前もって部屋を予約したのにも関わらず、ゲストハウスに到着すると部屋がないと言われ、バックパックを背負って、夜中ずっと町中のゲストハウスを探していたらしい。絶対にネットにこのゲストハウスのバットコメントを書く!!とぶち切れていた)
滞在してストレスが溜まるゲストハウスはまだしも、滞在していないのに、ストレスな場所も珍しい。 ←もはや笑。
お金を稼いで生活をしなければいけないのだから、オーナーが必死に集客しているのも納得できる。
しかし、ここでの3日間、居心地がまったく良くなかった。
私がインドに滞在して一ヶ月目で初めて嫌な気持ちになったゲストハウスである。
さらに、最後の滞在の夜、オーナーが突然部屋に来て
“オーバーブッキングになってしまって困ってる。今、受付に白人女性が3人来てて、この部屋を渡したい。私の家族の部屋の小さな部屋にマットレスを敷くのでそこで眠ってくれないか?あなたたちはもう私のファミリーのようなものだから、平気でしょ?私はオーバーブッキングの対応で疲れてるのよ”
と、お門違いな質問をしてきて
“あなたたちは部屋をまけて欲しいんでしょ?小さな部屋に移動したら考えてあげる。それから、彼女たちにはこの部屋を600ルピーで貸すから、私がここを300ルピーで貸してることは言わないで。ビジネス イズ ビジネス(これはビジネスだから)”
とオッパッピーなコメントをしてきたのである。
おまえ、すげーなーって、さすがに笑っちゃって
“いやいやいや、これは交渉するには違うと思うよ。交渉と言うのは対等だから成立するのであって、あなたはホットシャワーに関してすでに約束を破っているんだから、値段交渉は当たり前で、私たちにあなたの家で眠ってと聞いてくるのはおかしいよ”
と言うと、ちょっと待って!とどこかへ行き、突然オーバーブッキングした白人女性のグループを部屋に連れてきたのである。
“ハーイ”と白人女性たちも苦笑い。
“ここにどうやって3人で寝るわけ?私たちは3人用のベッドを予約したのよ”
女性陣、怒っています。
しかし、夜の11時に、人の部屋に他のゲストたち連れて来ちゃって、すげーなこのオーナー。
ここまで図々しいと面白い。
穏やかで気のいい日本人たちに、彼女のスーパー図々しさを半分わけてやって欲しいとすら思う。
部屋を見たあと、オーナーと白人女性たちは受付に戻っていった。
外から声が聞こえるので、見てみると、女性グループたちがオットに乗って移動していったのが見えた。
白人女性が去ったあと、オーナーと話すと
“彼女たちは小さな部屋が気に入って小さな部屋に滞在する事になったわ、あなたたちはこの部屋に滞在していいわよ”
と平然と嘘をついてきた。
明日ジャイサメールにバスで向かうため、チェックアウトすることと、300ルピーから200ルピーに部屋の値段を下げるように伝えると、オーナーは私たちのバスの時間を確認し、明日の朝、話そうと、その日は解散。
翌日、チェックアウトの時間である9時に受付に行くと、オーナーがいない!
スタッフに聞くと“寝てる”とのこと。
ええええええええー!?
他のスタッフも一同、オーナーが金額を決めるので、僕らは交渉できないと冷たく言われる。
ちーん。
バスまでの時間がせまっていた。
ゲストハウスから移動しなくちゃ。
オーナーはバスの時間を知っていたから、こうやって姿を現さないのも確信犯だったのかもしれない。
本当に眠かったのかもしれない。
本当のことは分からない。
起こしてやろうかと思ったが、温和な相棒に”まぁまぁ。もうバスに乗ろうよ”とうながされ、時間もなかった、結局一泊300ルピー支払い宿をあとにした。
オーナーは結局、最後まで姿を現さなかった。
300ルピーは安宿である。
安宿に泊まるから、こういうことになるんだって言う人もいる。
お金を払えば良いホテルに泊まれる。
だけど、200ルピーの安宿でも良い部屋はある。
インドを旅して一ヶ月が過ぎて、実際に分かったこと。
安くても人が親切じゃなくて、正直じゃなければ泊まりたくない。
ハリドワール、リシケシ、マクロガンジーと、いいゲストハウスに安く泊まれたのはラッキーだったのかもしれない。
2カ月滞在して、2度と泊りたくない!と思った唯一のゲストハウスでした。
”日本人は英語ができないし、お金持ってるから、お客にするには一番いいのよ”
ジョードプルで泊まった宿のオーナーの一言。
どこの国にいても、日本人=英語ができないというイメージを持たれてる。
ガイドブックを頼りにして旅をしている=日本語で話しかけて優しくすればチョチョイのチョイ。
と思ってる輩がいる。
けしからん!
しかし、その人たちにだまされるほうにも問題があるのである。
お金があって、出費するのに問題がない人は問題ないけれど、気になる人は確認の上に確認を重ねた方が○
物を買う場合でも、宿を取る場合でも、事前に相場をチェックすることが○
英語ができる場合は、英語で検索した方が相場が分かりやすいです。
(日本人はあまり激安バッパーに泊らないので、安宿を見つける場合は英語の方が見つけやすい)
インドに行ったら、インド人ばりにグイグイいけ。
これ、2カ月滞在して学んだこと。